MMTEC Brand Story

エンジニアリングはロマンである

資源環境コンサルティング

地下の構造を見る男

広大な砂漠の下に眠る鉱床を探す

 調査団はアジアのとある国の砂漠で、ある有用元素を含む鉱石を探していた。衛星画像とGPSを頼りに4WDで砂煙をあげて疾走し、車から降りてはハンマーを片手に地表をくまなく観察した。どのような岩石や鉱物が見られるか、それはターゲットである鉱石とどのような関係があるのか、この砂漠の地下に鉱石が濃集した鉱床が存在するのか?電力や道路などインフラの整っていない地域である。遊牧民式のテントに寝泊まりしながらの調査であった。

 これは5年間にわたって実施された日本と相手国政府との共同プロジェクト。対象地域において鉱床を発見するための資源探査であった。対象地域の面積はおよそ12万㎢。北海道と青森、秋田、岩手を足したような広大さだ。冒頭の現地調査にいたるまでの3年間に、航空機を使った物理探査や地球観測衛星の画像解析などにより、対象エリアは300分の1の約400㎢、横浜市ほどの広さにまで絞り込まれていた。実際に鉱石の有無を確認するボーリング調査を行うためには、そこからさらに、地下に鉱床が存在する可能性の高いポイントを選定する必要がある。

 ちなみに、地表における岩石や断層の分布を描いた「地質図」が資源探査には必須である。ところがこのときは、縮尺100万分の1という非常に大雑把な地質図のみしか相手国側から入手できなかった。そこで調査団は衛星画像を活用し、現地を踏査して得た岩石や断層の分布状況を照らし合わせて、縮尺2万分の1の詳細地質図を独自に作成した。
また調査団は次のような鉱床モデルを描いていた。鉱床モデル、つまり鉱石がこの地域でどのようにして生成され、濃集したかについての仮説である。それは、こうだ。

・鉱石が生成された場所は1.5~1億年前(前期白亜紀)の温暖な気候の頃の湖沼
・湖沼の周辺には、鉱石の元となる有用元素が存在しており、それが河川によって流され運ばれて、湖底に静かに堆積する
・湖底に沈んだ有用元素の上から、同様に河川で運ばれてきた礫や砂、泥が厚く堆積し、それによって生じる圧力・熱によって有用元素が濃集、鉱石が生成される(この過程を鉱化作用という)
・その後、断層に沿って上昇してきた火山の熱により鉱化作用が促進、鉱床が形成された

 このように仮説を立てると、地質図の中のどの場所の地下に鉱石が眠っているかが見えてくる。例えば、主に礫や砂からなる地層は、有用元素が静かに堆積できる環境ではないから、ボーリング調査の対象から外す。一方、泥の地層は有用元素が静かに堆積できる環境で、なおかつ断層周辺では熱による鉱化促進の可能性がある。つまり鉱石の存在が期待できる――といった具合だ。そうやって選定したポイントで、次はいよいよボーリング調査だ。想定した鉱床モデルが間違っていなければ、鉱石が見つかるはずだ。1カ月間で約30孔、総掘削長4,000m超の調査を行った。

 結果、約9割の調査孔で鉱石の濃集を捕捉した。そのほか物理検層などを行い、帰国後の分析でも高品位の鉱石を確認。資源量評価で埋蔵量数億tの中規模鉱床を発見した。

 岩石や断層、地下水、マグマなど、地下の環境は多様だ。ひとつとして同じところはない。地上の様相が世界中さまざまであることと、それはリンクしている。だから、地下の環境や変動が影響して地表に現れたなんらかのエビデンスを捉えることができる。そこに物理探査や衛星画像解析などの探査手法と、さまざまな国や地域で得た知見・経験をかけ合わせ、実際に世界中の地面を掘り返すことなく、その場所の地下の構造を想像することができる。鉱物や地熱といった地下資源を開発するために欠かせない調査である。

三菱マテリアルテクノを
もっと詳しく

事業分野